『ボーン・レガシー』



(アーロン、ルァァァァァァァァン!!!!)


いやー最高じゃないですか。
ジェレミー・レナーがCIAエージェントで超人的な殺人能力もってるってだけで良いじゃないですか。
幼児のような顔でロシア語をつぶやくアーロン。なんだか物凄いバカだけどスキルが異常だからなんとかなっちゃうアーロン。
無軌道に突っ走って具合悪くなってピンチだけど寝るアーロン。人の上に落っこちるアーロン。実は水増しアーロン。
ギョロ目のヒロイン。


この映画に関して、それ程良い評価じゃない方の意見が少なくないのも知ってます。
確かに「ボーン」シリーズのファンの方だったり、「ボーン」シリーズの独特の雰囲気、
グリーングラスの手腕が好きな方からすれば「おもてたんとちゃう!!」となるのもわかります。
僕はこの『ボーン・レガシー』を観るために前もってDVDで前三部作を観たんですが、
そっちは僕はイマイチだったんですけど、でも明らかに前三部作と比べ本作が別物感があるのは感じました。

それとは別に。ストーリーが甘い、わかりにくい、粗い、雑だというのもわかります。
特に前半CIA本部からアーロン、CIA本部からアーロンみたいなあっちいったりこっちいったりするややこしさ、
更にはCIA本部での前三部作のあらすじを上手くない感じのまとめかたみたい感じとか退屈です。ちょっと寝ました。
あと終盤とオチとかもジャイアントスイングみたいな放り投げ方だし、僕みたいな変な見方してない冷静な目を持った方々からすると、
「勝手にしてくれ」、もしくは「知らねーよ」な感じの感想になるでしょう。
そりゃ前半からこつこつ貯めてた不満の積立預金が満額でしょう。ええ。


でもそれでもこの映画僕は好きなんですね。
それは第一にジェレミー・レナーが好きだっていうこともあるんですが、なんかニクめないんですよね。
アーロン・クロスは計画性が無いし、知的とはあまりいい難い完璧ではないエージェントです。
エージェントっていうよりアッサッシンに近いかもしれない。目標の破壊、殺害に関しては手段を選ばない、
そしてそれを完璧にやり遂げる能力を持っているキャラクターです。
しかし何か欠けている人物で、スキル(能力)に溺れている感があるという風に僕は感じました。
僕はその理由を終盤で示していると思っています。
彼がエージェントになれたのはキャプテン・アメリカ的な理由からドーピングをしたからであったということが明かされるのですが、
薬によって飛躍的に身体能力が上がったことで劣っている自分は過去に捨て、
新たな自分になれたと本人は思っていることがその増長の原因だと思います。
それが今回の事件が起こり、自分がどういう人間であるかをもう一度気付かされることになる、という話だと僕は思いました。
そしてアーロンにそのことを気付かせるヒロインである自分の体調を管理する薬を研究している女性の博士との出会いなんですが、
この博士と共に組織から逃げて行くうちに今の自分というのは他人に管理され、作られた自分であることに気付きます。

この映画をなんとなーく観ている人でも雰囲気で感じると思うんですが、今回のアーロン君はあまりエスコートというか
「俺は男だ!俺についてこい!」って感じじゃないんですよね。もちろん関係的に博士が情報をもっているわけですから、
アーロン君は博士に従って付いていくしかないんですけど、なんとなく頼りない感じがするんですねー。

僕が勝手に思っていることなんですが、今回のヒロインは物凄く母親的な存在に近いと思っています。
実際薬を開発してるのは彼女ですし、工場の場所を教えたのも彼女です。更に看病し、アーロンの身に危機が迫っているということを
叫んで伝えたのも(予告動画でもそのシーンはありますが)彼女です。
特に「アーロン逃げるのよー!!」と叫ぶシーンはお母さんが子供に対して行っている様だなと思いましたね。

また、アーロンは「よくわからないこうか」の薬が切れて死にかけている時に、更に「よくわからないりくつ」で薬のいらない体にして貰うために
注射を打つんですが、
この注射が体の仕組みを変えるとにかく凄い注射みたいで、副作用というかその効果に伴う苦しみが半端じゃなく、死の瀬戸際まで行ってしまいます。
そこから復活した彼はまだ途中段階ではあるものの、以前の彼とは既に違います。
心身ともに誰にも管理されない彼に生まれ変わったんですね。その証拠といってはなんですが、その前のシーンで彼は過去に捨て去った自分のことを回想するシーンが出てきます。
見たくない本当の自分と向き合うなんてことはこの事件が起こらない限りなかったわけですから、
これはこの一連の騒動がきっかけとなり、彼女(博士)によってもたらされた彼の成長といって良いと思います。

まぁここまでは良いんですけど(それでもわかりにくいですけど)、ここからの展開がちょっとしつこかったかなという感じですね。
僕は嫌いじゃないですけど、追ってきた刺客のトドメを博士が刺しちゃうっていうのは「お母さん感」強過ぎですし、普通に観てても「情けねぇな!」って思いますよねー。
あとさっきもちょっと触れましたけど、薬の設定が適当過ぎますね。複雑にするのは良いですが、何故二つに分けたのかが
最後までよくわからないまま終わっていきましたし、はっきりいって見た目も「色付きフリスク」みたいでなんだかなって感じです。
ちなみに薬のケースを首からかけていましたが、あれはまんまドッグタグってことで良いと思います。
終盤生まれ変わった彼がそれをわざと置いて行くのは「もう管理されねぇぞ」ってことで支配から逃れたってことなんでしょうか。


このような解釈は僕の解釈ですし推測に過ぎないので、正しいかはわかりません。
ですが、これは全てのシリーズ、スピンオフものに言えるのかもしれませんが
今回でいうと「ポールはこんな風に撮らない」とか、「ジェイソンはこんなことしない」みたいに言うのではなく、
まず内容を観てから個々で評価していく必要があるのではないかなと思いました。
(もちろん冒頭に書いた通り、本作は完全に「「ボーン」シリーズとは別物」という意見も納得しています。)

少なくとも評論されるのであれば、ここはこうすべきであると指摘する必要があると思いますね。
単純な感想としても、僕はこの映画を「クソ」だとは決して思いません。


〜追記〜
・今回はえらく小難しくなってしまってすいません。この映画についてあまりに酷く書かれていたものですから。
・本当は「終盤に出てきたエージェントってエグザイルみたいじゃね?」とか「期待されてた割にお前ショボいな!」とか書きたかったんですよ。
・最後のバイクチェイスのシーン『ターミネーター』かよ!
エドワード・ノートン今あんな感じなんすね!この映画では終始「あっちだー!(ドタドタ)」「こっちだー!(バタバタ)」ってしていた印象しかないですが。
レイチェル・ワイズのヒステリックな感じ、たまらない何かがありましたねー。あと追いつめられて現実逃避しちゃう感じとか良かったですよ。
・脚本の粗は酷いものがありますが、アクションに関して全然ダメという人もいてソーナノカーという感じです。
・「『座頭市』か!」って感じの音を頼りにした物置からの発砲シーンとか、警備員を壁に打ち付けたと思ったら倒れる頃には既に銃をむけてる所とか、良かったけどなー。
・続編あるならきちんとやって欲しいと思います。