『アウトレイジビヨンド』

(戦争にでもなったら誰が責任とんのじゃボケェ！！)

前回の『アウトレイジ』は「お前らヤクザ映画でこういうの観たいんだろぅ？！」っていう感じのサービスシーンがわんさかあって
非情に面白かったわけですが、今回は一変してオープニングから重苦しい雰囲気で始まり、最後までモヤモヤの残る作品でした。
もちろん前回も重苦しい嫌な雰囲気はあったのですが、今回はその中に寂しさや虚しさが作品内を一貫して含まれていて、
観ている最中や、観終わった後も哀しい気持ちにさせてくれるような内容でした。
主人公の大友も最初の登場シーンから消極的な感情を出していて、それが僕には「もうこんなことしてる場合じゃねぇよな」といった
北野監督自身の気持ちの表れに取れました。
それが年齢のせいなのか、時代の影響なのかはわかりませんが「前回の様な映画はもう観れないのか」というガッカリ感と共に、
その様な気持ちになるのもわかるなと思ったりしました。

もしくは前回のヤクザが悪カッコ良過ぎたから、今回のヤクザは悪カッコ悪い風にして徹底してモヤモヤ感を残したのかも知れません。
ジャンル映画といえど、勘違いして憧れてしまう若い人たちもいるので、「悪い」ということへのケジメの付け方としては正しいと思います。

確かにヤクザ（ジャンル）映画っていうのはポルノ的な内的欲求を満たす為のものという側面もあると思うのですが、
かといって「死」や「痛み」「反社会的行動の代償」など描かないといけないと思います。
好き嫌いは別にして、近年の「ヤンキー映画」はそういったことがあまり描かれてないかなとも思います。
（それが「ヤンキー映画」と言われればそうかも知れませんが）

そういったことを描く、ということが正しいと思う人ばかりではないのかも知れませんが、
僕はヤクザ映画でもカッコ悪いキャラクターや、情けないキャラクターが登場する方が好きです。
なので人間臭さや悲喜交々が描かれている『仁義なき戦い』が大好きで、
カッコ良かった若杉があっけなく死んでしまう所とか、小心者の槙原が他人を操ってのし上がろうとする所とか、
不器用な山中が道を間違い深みにはまって、鬼の様に眼を血走らせる所など、人間の汚い部分や間抜けな部分がグッとくるんです。

話が逸れてしまいましたが、結局ヤクザが憧れの対象になっちゃうとちょっと違うなぁと思ってしまいます。
そういった意味では今回は前回にも増して怖く虚しいヤクザの一面が描かれていたと思います。
（前回も後味の悪い終わり方でしたしね。）

例えば本作で冷血な殺し屋の城（高橋克典）は見た目もめちゃくちゃカッコ良いですし、確実に相手を仕留めるという点でもカッコ良いという風に取れるかもしれません。
しかしセリフは喋らないですし見栄も切らない、本当に機械の様に相手を殺すだけなので怖いだけです。
その上素性も曖昧にしか描かれないので感情移入も出来ないですね。
感情的に正しいことをしても、決して救われる場合だけではないということも作品内で示してますし、
石原（加瀬亮）の失禁シーンなどで普段は虚勢を張ってる男の情けない姿も描いてて良かったです。

ジャンル映画的にも「こんな死に方は嫌だ」のようなシーンがきっちり入ってて良かったんじゃないでしょうか。
なによりグッときたのは西野（西田敏行）と中田（塩見三省）の関西弁の怒号ですね〜。
実際の関西弁とはちょっと違うんですが、もっと観たかったですね。あんな大仰な関西弁は今使わないと思いますけどあれはあれでグッ！！
それに対する大友の態度も怯んでなくて良かったです。
僕は関西生まれですが、なんか昔から「関西弁で関西人に気圧される関東人」というのがなんだか嫌で、
「そんなもんでビビるかよバカヤロー！」って感じの大友がちょっとカッコ良かったり。
あとは謎の韓国フィクサーのあの人とか、その右腕のあの人とか・・・。
あの人をあの役で出せるのは北野武だけなんじゃないかって思いました（笑）。

ただ嫌な所もあって、一番はやっぱり石原を演じる加瀬亮さんの間違った方向のオーバーアクトですかねぇ・・・。
前作にも増して浮いてましたからねぇ。いや作品と俳優によってはオーバーアクトが良い時もあるんですが、
キャラとしていくら稼いでてもああいうホントに薄っぺらいことがわかってる人についていく人なんていないんじゃないかと思ってしまったので。
後は加藤（三浦友和）もいくらなんでも後半の方バカなやつとして描かれ過ぎじゃないかっていうのも思いましたね。

一応キャッチコピーで完結って言ってますし、この感じだと監督も終わらせたいのかなという感じですがどうなんでしょうか。

〜補足等〜
・新井君と桐谷君がチンピラとして出てて、個人的には活躍して欲しかったですが、あそこで若いやつを活躍させちゃうとまた意味変わってくるんでしょうね。
・木村（中野英雄）のまんまと操られちゃう感凄かった。
・ベテラン三人組はわざとああいう情けない役回りなんだろうけど特に富田（中尾彬）とか見せ場期待してたけどあっさりでちょっと残念だったり。
・ちなみに白山（名高達男）はテレビ東京のドラマで今キョンシー役をやってるとか・・・。
・ちなみに繁田（松重豊）はテレビ東京のドラマで今ゴローちゃん（以下略