『二郎は鮨の夢を見る』

今日は3月10日です。
一週間ぐらい前の映画の感想を書くのは久しぶり!(嬉)


京都みなみ会館で観てきました。

この作品は観るか迷っていたのですが、(後日感想を書く予定ですが)京都みなみ会館にて開催される予定だった
オールナイトイベントの前売り券を買いに行くのが本来の目的で、ただ買いに行くだけっていうのは交通費がもったいない気がして、それで観てきました。

ちなみにその前売り券なんですが、『デッド寿司』を観る時にオールナイトの存在を知ったのですがその時は金欠で手持ちが無かったので
給料日の25日に即買いに行ったのですが、焦った割に整理番号が「5」という(笑)(焦る必要なんか無かったんや!!)



関係無い話はこのくらいにして本題に移りたいと思います。



(『デッド寿司』の次に観た映画がこれだよ!)



「(食事は一人)三万円からです。」という凡愚平民の僕からすると「(回転寿司が30回食べれる・・・!!)」という浅ましい考えしか出ないお値段のお店が
本作の主人公とも言える小野二郎さんがやってらっしゃる「すきやばし次郎」というお寿司屋さん。

僕はミシュランと聞けば「あの白いマシュマロマンみたいな・・・」ぐらいしか知識がないんですが、
そのミシュランタイヤが出してるグルメガイドみたいなものが、それだけで一人歩きしてる感満載で注目されてるそうで、
そんなミシュランガイドで毎回三ツ星を付けられているのが「すきやばし次郎」というお店だそうです。

「ここクレジット決済無いの?はい一ツ星〜〜!!」でお馴染みのミシュランガイドも(実際は知りませんが)、
このお店だけはトイレが店外にしか無かろうが、クレジットカードが使え無かろうが三ツ星以外付けられないというそれくらい凄いお寿司屋さんだそうで。


それだけ聞くと僕みたいなもんは「俺とは関係の無い世界だ!」と壁を勝手に作ってしまいがちですが、
お店うんぬんのことは置いといても小野二郎さんとその周りの人を追ったドキュメンタリーとして面白かったです。


小野二郎さんという方は85歳なんですが、イメージとしての「江戸っ子」みたいな感じでは無いものの、
自分の哲学や美学を芯から持った職人さんで、話されている感じだけ見ると優しそうなおじいさんという感じでした。
この方の「無駄の無さ」はお寿司を握っている時だけでなく、むしろお寿司を握るために生活されていると言ってもおかしくないくらいでした。
お寿司の夢を見て「こういう風にすれば良いんじゃないか」と跳び起きることもあるそうです。(タイトルは恐らくこの話から来ている)


お二人の息子さんも寿司職人をされていて長男の方は二郎さんと一緒に、二男の方は自分のお店を(のれん分けの様な形で)持っていらっしゃるそうです。

まぁこれくらい面白いというか、ドキュメンタリーの素材として凄い人達もいないですよね。
まず「寿司」という日本の伝統的な食文化が目を惹きますし、その職人の中でも超一流となれば平凡なわけはないですし。
観て貰えばわかりますがはっきり言って「凄い」「面白い」としか言えないんですが(笑)、
なので今回は「素材」ではなく「作り手」のことについての感想を少し書いていこうかなと思います。



まず、この作品を観ていて「変なドキュメンタリーだなー」と思ったのは音楽が結構付けられていること。
普通のドキュメンタリーでもBGMは付けられていると思うのですが、本作はクラシック音楽がかなり流れているんですね。
そんなにドキュメンタリー映画ばかり観ている訳ではないんですが、なんか変わってるなと。
次に気になったのは映像演出のことについてなんですが、あるシーンで下駄に乗せられたお寿司が次々に乗せられてはフェードアウトして消えていくという場面があり、
「なんじゃこりゃ」と思いました。
で、後で調べたらこの作品の監督は海外のデヴィッド・ゲルブという方がされているそうなんです。

それらの情報が組み合わさって出来たのでた感想は・・・。


クラシック音楽の多用」・・・「変わった映像演出」・・・・「海外の監督」・・・


「・・・っぽい!ぽいね!」


なんだか「オシャレに仕上げましたけれども?」みたい雰囲気に包まれてるんですよね。まぁ「海外監督、ニポンの伝統食文化に迫る」みたいな感じが満載なんですよ。

いやオシャレでも良いんですけれど、そういった演出とかとは別にこの映画はひっかかる所が少なくないんです。

例えば本編でクラシック音楽がドキュメンタリー映像と共に流れるわけですけど、メインの二郎さんが喋ってる時にも流しちゃってるんです。
これはいけないですよ。例えば劇映画で俳優さんに演じて貰ってっていうのは良いんですけど、小野二郎さんは俳優さんでもないですし、
映画を作るにあたって出ていただいてるのに、音楽で声が聞こえない所もありましたし、観てる側は「何喋っているかわからない」と思いますし、
もしかしたら無意識に「何喋ってるかわからないから大きな声で」と思ってしまうことで二郎さん側に問題がある様に感じてしまうかも知れませんからね。


あとこれは大きな問題ではありませんが、個人的にはインタビューするシーンでスタッフ側の声は入れないで欲しかったです。
はっきりとインタビュアーの存在を出すという構成ならそれもわかるのですが、スタッフのマイクに乗っていない声がボソボソと聞こえるのはうまいとは言えませんね・・・。
今時アダルトビデオの女優さんへのインタビューでさえ作り手を意識させない作りになってるのに!!

でもそんなことは細かいことだと思う様なことがあるんですヨ・・・。


僕が感じたこの映画の最も大きな問題、それは「結局表面的にしか撮れてない」ということなんです。

それはどういうことかというと実はこの小野二郎さんが映像媒体に出られるのは初めてではないんですよ。
僕が確認しただけでNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』とフジテレビの『日本一の鮨を握る男 〜すきやばし次郎の365日〜』という番組に出られています。
映画を観てこの感想を書く参考にと、前者の『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組のDVDを借りて観たんですが、
(まぁここまで書くとわかると思うんですが)こっちの方がドキュメンタリーとして良く出来てるんですよね・・・。

もちろん映画とテレビ、それぞれ違う媒体ですし、ルールやアプローチも違うのはわかるんですが、
(映画はナレーションを付けられない、付けるのはカッコ悪いじゃないか!みたいな)
そういうの省いても観比べてみるとわかりますがはっきりNHKのドキュメンタリー番組の方が良く出来てるんです。


ここから比較、というより『プロフェッショナル 仕事の流儀』の良い所を挙げる文になってしまいますが、(笑)
まず取材時期。例えばこのブログでも取り扱った『ドーバーばばぁ』のように、ドキュメンタリーってただ撮ってれば良いというものではなくて、
何か撮影時期に取材対象が大きなイベント、出来事、もしくは「壁」を目の前にしてるというようなことがない限り成り立たないと思うんですよ。
というかまずそれを狙って番組なり映画なりを撮ると思うんですけどね。
(AKBのドキュメンタリー映画みたいな一年中ベッタリ密着してっていうのもありますが。)

で、内容なんですが、本作『二郎は鮨の夢を見る』は前編通して二郎さんと寿司を中心に迫っているのに対して、NHKの番組は前半は二郎さん自身のこと、
後半はその年のミシュランガイドの星の発表と、二郎さんがライバルと認めるフレンチシェフのジョエル・ロブションという方との再会について構成されていました。

小野二郎さんという方の寿司職人としての経歴の長さや、自身の哲学や評価の理由だけ撮っていても面白いのですが、
はっきりとNHKの番組の方が上手く出来てます。

だって映画の方はガッツリ小野二郎さんについて知れる!と思って観たらなんか料理評論家の人の方が出演時間長いんじゃないかと思う位その人の話が長いし、
お寿司を握っている時のお客さんとの空気感もNHKの番組の方が良く撮れてるし、
何故かお客さんに紛れてさっきの料理評論家の人がいて勝手に「二郎さんトリビア」みたいなの話し出すしクラシック音楽で二郎さんの声聞こえないし、
何よりチラッと映るジョエル・ロブションさんは一瞬しか出てこない上にジョエル・ロブションさんについての説明は無し!!

小野二郎さんについては皆さんもうご存知かと思われますが〜」という始まり方をしているにも関わらず二郎さんについて表面的にしか撮れていないって、それは良くないと思いますけどね。
「二郎さんについてほとんど何も知らない」という人に向けて作っているのならせめてジョエル・ロブションさんについてもっと掘り下げるべきでしたでしょうし、
本作の半分の約40分で構成されてる『プロフェッショナル 仕事の流儀』が出来てるわけですから、そこまでは時間的に余裕がないっていうのは理由にならないと思います。
技量が足りないという自覚があるならせめてNHKの様に取材時期をミシュランガイドの星の発表時期にするとか、そういった工夫が必要だと思います。


なぜここまで出来に関して言及するかというと、小野二郎さんは取材に関して本当に協力的で、お店の邪魔になるはずなのに時間を割いてインタビューや
店内風景を撮影させて下さってるはずなんです。それに「すきやばし 次郎」というお店の宣伝になるという理由だけで取材を許可したようにも見受けられなかった。
なのでそんな寛容で誠実な対応をして下さってるのだから、製作者側も誠実な態度できちんとした作品にしないとダメなんじゃないの、と思ってしまったので。


それに一番面白いし、観たいのは二郎さんとジョエル・ロブションさんの国や人種を越えた最高峰の職人同士のシンパシー

シンパシーオブソウルの場面ですよ!!(興奮)

これは『プロフェッショナル 仕事の流儀』にて観ることが出来ますので気になった方は是非!
番組内でジョエルさんが「俺の店に来る時は、俺がいる時に来てくれ(味の最高の保証が出来るから)」と二郎さんに伝えたというエピソードまで二郎さんが語られているんですよね〜。
いやもちろん、二郎さんの生活とかを撮った本作も良いんですが、僕的にはこういう頑固な職人の精神的な心の握手が観たかったんですよね〜。


なので、もしこれからこの『二郎は鮨の夢を見る』をご覧になるっていう方は、『プロフェッショナル 仕事の流儀 修行は、一生終わらない 鮨職人 小野二郎の仕事』を
DVDなりオンデマンドで観るなりしてからの方がおすすめですよ!



あ、ここまでNHKの番組を褒めるとステマやNHKの差し金、回し者と思われるかもしれないのではっきりと悪い所も言っておきますが



この番組、司会者の髪モジャのする質問が酷い。全くいらない。(真顔)





〜補足など〜
・この映画も観るも堪えないって程の出来じゃないけど、NHKの番組を観ると基本的なことは全部入ってるし出来も良いのでからそっちの方が好きかなと
・本文にも書いたジョエル・ロブションって人。見るからに頑固って感じだけど、腕も確かなようで日本にも支店があるそうな〜
・色々調べてると監督は「世界一の寿司職人を題材にした映画が撮りたかった」なんていってるみたいだけど、だったらそれなりの態度と覚悟で(ry
・そういう発言からもなんかどうも物見遊山感というか、上から来ている感じが(ry
・監督の過去の作品を調べたけど観ることが出来なかったんだけど、どうやらPVとかドキュメンタリーとかを中心に撮っている監督っぽい
・全く余談だけど、若い頃の写真に映ってる二郎さんがマキタスポーツさんに似ていた(本当にどうでも良い)
・ちなみにこの映画を観た後初めてスシローへ行きました。おいしかったです。(小学生の感想)



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