『ドラゴン・タトゥーの女』

2月15日のAKBの映画を観た後に観ました。

宣伝バンバン打ってるせいか大きいシアターでしたが、人は結構入ってましたね。

デビッド・フィンチャー監督作ということや、リスベットのビジュアルのかっこよさもあってでしょうか。


先に書いておくと連続して観たせいか、途中ちょっと寝てしまいまして(笑)
まぁと言っても序盤の10分ぐらいなんですが、一応書いておきます。
いやぁ最近のシネコンの席は座り心地が良くってねぇ。(言い訳)


さてでは本題に入りたいと思います。



原作は小説で、スウェーデンで一度映画化されてますね。
この記事ではではこのスウェーデンの方をスウェーデン版」
今回のフィンチャーのを「ハリウッド版」とします。
(今回はそのスウェーデン版とハリウッド版の僕なりの比較がメインに書いていきます。
ネタばれは極力避けますが、嫌な方は読まない方が良いです。)

どうやら今回は「リメイク」ではないらしいのでこういう表記にしました。
(かといって「デビット・フィンチャー版」と「ニールス・アルデン・オプレヴ版」という風に書いても長いし、だいたいスウェーデン版の監督無名ですしね。)


ネットでの感想は今回特に色々読みました。
普段は趣味の似ている映画感想ブログしか読まないのですが、
特殊な作品だったので他の人がどう解釈したのか気になり他のブログも読んでみました。
ま、といっても10、20読んでいる訳ではないので偉そうなことは書けませんが(笑)。

そして読んでみて分かったのは意外とみんなスウェーデン版観てないんだーということでした。
スウェーデン版『ドラゴン・タトゥーの女』を観たとおっしゃっている方は多かったのですが、
『火と戯れる女』『眠れる女と狂卓の騎士』の話を書かれている方があまりいらっしゃらなかったので。
これはもちろん「俺は観てるぜー凄いだろー」とかいうものではなく、単に『ミレニアム』三部作って
三個で一つだと思っていたのと、もっと人気があるものだと思っていたので新たな発見でした。
やはり色々な人のブログを読まなければこういうこともわからないのでダメですね。

というのも初めてハリウッド版のポスターを見た時真っ先に思ったことがあって、
それは「リスベットのあの髪型って・・・」ということです。


これですね。

これと三作目の『眠れる女と教卓の騎士』のリスベットの髪型が似てるなと。

スウェーデン版のようにツンツンでバチバチのモヒカンではないですが、
モヒカン風の髪型になってて、一作目でこの髪型にしていいのかなぁと思ったりもしました。
と同時に、もしかしたらハリウッド版はスウェーデン版の三作を微妙に混ぜたものになってるんじゃないかと、この時点で勝手に推測してました。
実際ハリウッド版を観ても、いきなりこの髪型にしてましたし、とあるシーンでするメイクも
スウェーデン版『火と戯れる女』でリスベットがするメイクとほぼ同じでしたし。
活字がビックリするほど苦手な僕は原作小説の『ミレニアム』までは読めていないのですが、
「リスベットはここではこの髪型をしていた」みたいな描写は細かくはされてないのでしょうかね。

ちなみに映画評論家の町山智浩さんによると今回のハリウッド版は一応スウェーデン版は意識せず作ったそうです。(リンク先ポッドキャスト4分40秒頃から)
微妙なのは、そういった髪型やメイクの細かい指定などが原作小説でなされているかどうかですが、
もしされていなければ少なからず意識した作りになっているんじゃないでしょうか。

何故ここまで髪型やメイクのことについて言及するかというと、
もちろんスウェーデン版を意識しているかどうかもそうなんですが、
本作にとってリスベットの髪型というのはリスベット自身の心の変化を表している様にも観えたからです。

スウェーデン版一作目では周りを警戒し遠ざけるような髪型をしていて
二作目では髪の毛を伸ばし、手も加えず、自然体の姿で描かれていて、
三作目ではとあるシーンだけ威嚇するような、警戒心をむき出しにしたような髪型になっていたという風に思いました。
僕はそういうシンボリックなものがどういった意味であるかをきちんと学んだわけではないので、
どのようなことを表すかは勝手な推測ですが、三作でリスベットの変化が見られることは明らかです。


なので、ハリウッド版『ドラゴン・タトゥーの女』でリスベットがモヒカンチックになっていたのは良いのかなーと思ったりしました。
まぁ先程のリンク先のポッドキャストでも町山さんがおっしゃられていましたが、
売れないと続編作れないので、軍隊のようなメイクやモヒカンは一応三作混ぜたように作ってますよーというアピールなのかもしれません、


次に、リスベットのキャラクターですがスウェーデン版とハリウッド版では似ているようで
結構はっきり違うキャラクターになっていると思います。
他の方の感想を読んでる中でまー今回のリスベットについて「可愛い」というの意見の多いこと(笑)。
でもその通りで、今回のリスベットは僕もめちゃくちゃ可愛いと思います。
『スプライス』(公式サイトがなかったのでファンサイトです)に出てた頭ツルツルのドレン役だった
デルフィーヌ・シャネアックという人が実はビックリするほど美人だったように、
今回のリスベット役のルーニー・マーラも実はめちゃくちゃ可愛いんですよね。
元があんなに可愛い人ならそら可愛いわ!って感じですね。

なので、今回のリスベット凄く可愛いんですが・・・それ故に僕はちょっとなぁという思いを抱いてしまいました。
別に「嫌!」とか「ダメ!」って訳じゃないんですが、僕の持っていたリスベット像とは違ったので違和感があったことは確かです。
そもそもスウェーデン版でイメージが付いているということもあるんですが、二人のリスベットを比べても僕はスウェーデン版の方が受け入れられるかなと。

もっと言えば受け入れられるとかの問題でもなくて、
スウェーデン版のリスベット(ナオミ・ラパス)は筋肉質で鋭い目をしている上に
内面も非常に警戒心が強くなかなか心を他人に開かないが、信頼できる人には不器用なりに優しくするといった
印象だったのですが、今回のリスベットは凄く細く華奢なんですね。
内面もスウェーデン版に比べると気性が荒くなかったような気がします。
後見人のおっさんとのやり取りもスウェーデン版はネチネチと嫌がらせをさせられるシーンを入れているのに対し、
ハリウッド版は割とあっさり終わっています。
この点については後でまた触れますが、全編を通してみても二つの作品におけるリスベット像は違うように思えます。

スウェーデン版はホントにどこまでも不器用な女性と感じなのですが、
ハリウッド版はちょっと奇抜な社会との繋がりを持てない子という感じでそれぞれの良さはあると思いますが、同じキャラクターでもここまで違うのかと思いました。


でもどちらが好きかと聞かれれば僕はスウェーデン版かなと思いました。
というのも僕が凄く曲がった心だからでしょうが、格好や性格が奇抜で変わっていても、
あんなに可愛かったら誰かすり寄ってくるやろ!と思ってしまったので・・・(笑)。
つまりリスベットの孤独感がイマイチ無いかなぁと。

スウェーデン版の「こいつに近寄ったらアカン…」臭漂うリスベットに比べると、
ハリウッド版はパンク好きな女の子に見えてしまう可愛さを持っていたんじゃないでしょうか。

ラストのリスベットの選択に関してもほぼ真逆だと感じました。


理由を挙げるとキリがないですが、僕はスウェーデン版の方が好きですね。

ただ映画的に良く出来ているのは言わずもがなハリウッド版です。
キャラクターや映像の見栄えも良いですし、物語の展開やわかりやすさも完全にハリウッド版の方が上でしょう。
スウェーデン版のぼんやりした所をきちんと現実感を持たせて描いている所も凄かったです。
例えばミレニアムという雑誌の出版社の経済問題について特にスウェーデン版は触れられていませんが、
ハリウッド版はそこにも踏み込んでいます。
先に書いた後見人のおっさんとのやりとりを省略した代わりにネチネチとこっちの方を
細かく描いている所はアメリカ的なのかもしれません。
(あんな高圧的な業務提携?資金援助?を見た事なかったです(笑)。)
そういったディティールをちゃんと描いている所も流石だなぁと思いました。

序盤のおっさんに襲われた後の「ゲッ!そこにもリアリティー出すんかよ!」っていうシーンもありましたが・・・(笑)。

今までスウェーデン版の方が好きと散々書いてきましたが、映画のリテラシー能力が高くない僕でも
映画としての完成度が高いのは断然ハリウッド版だと思います。


でもやっぱダニエル・クレイヴは一人でなんとかできちゃうだろ!
だって組織エイリアンと戦ってたじゃん!
・・・という思いは最後まで消え去りませんでした(笑)。


あと、スウェーデン版のリスベットのあまりの言われようにちょっと待てくれと今回の様な記事を書きました。
スウェーデン版のリスベットはゴリラみたいだとかおっぱいがほとんど筋肉だとか好き勝手言いやがって!(誰も言ってない)
でも真面目な話、スウェーデン版は確かに映画としても雑な作りになっている所もありますが、
要所要所は「おっ」と思える所もあったりするんです。
例えば冒頭のミカエルが裁判で負けた後、街にいるシーンで周りの声が自分のことを言っているんじゃないかという所や、
中盤のミカエルがマルティンとセシリアの二人と食事しながら会話するシーンで
マルティンがある言葉を深読みしてある反応するんですが、そこは二回目観た時じゃないと気付かないし
気付いても意味がわからないような微妙な反応をしていたりする所なんかは結構目を見張るものがありました。(特に後者は)

でも確かにスウェーデン版に締りはないですね(笑)。

あとハリウッド版は観てる最中めちゃくちゃコーヒーが飲みたくなるので、先に買っといた方が良いと思います(笑)。


最後にモザイク問題ですが、ちょっと笑っちゃうぐらいでかかったです(笑)。もうどうしようもありませんね。あれを規制した人は。
(スウェーデン版は遠目でしか撮ってない代わりにモザイクかかってないです。あと騎乗位の腰の動きの速度が尋常じゃないくらい速いです。)


(補足や余談)
・ハリウッド版の後見人のおっさんはどうかと思う。スウェーデン版の後見人のおっさんは
表向きは弁護士らしさを保っていてだからこそ異常性が際立ったのにハリウッド版はなんかボサッとしたおっさんで「えー」と思った。
・ハリウッド版はヘンリックが倒れた時の撮り方とか、ミカエルがマルティン宅に入った時に家の作りを観客に把握させる撮り方は流石うまかった。
こういう所ははっきりと差が出ていると思う。
・全体的にスウェーデン版は静かでゆっくりで締りがないけど、ハリウッド版は飽きない程度に情報を盛り込みつつ次に展開させていてかつ見栄えが良い。
そりゃあハリウッド版の方が人気出るのもわかるわ!けど俺はやっぱりスウェーデン版が好き!(しつこい)
・リスベットが咥えさせられた後、口を洗うシーンがどちらにもありますが、スウェーデン版を未見の方は是非ここの容赦の無さを観ていただきたい!
観てる方が「いやいや…そんな洗剤で…しかもそんな大胆に洗っちゃだめだろ…」ってくらい豪快にリスベットが口を洗う姿が見られます。
スウェーデン版のミカエルはぼんやりし過ぎですが嫌いじゃないですよ。リスベットに触って「なんなの?」と拒否される所とか良いですよ。
・ちなみにスウェーデン版のミカエルはこないだのミッションインポッシブルの悪い人!ミカエルと違って超しぶとい!超打たれ強い!
・あとこれ書くためにスウェーデン版を2、3回観直した俺に乾杯!(誰かシングルモルトの21年物を下さい)
・そいうえばリスベットって過去にキックボクシングしていたっていう設定スウェーデン版の二部三部で登場するんだけど・・・どうするんだろ。
・観終わった後劇場を出る時にカップルみたいなのが「なんか最後切ない終わり方だったね・・・」って半笑いでちょっと気まずい雰囲気になってた。ヒャッハー!
・リスベットの乗ってるバイクがオフロードからオンロードのネイキッドになってた。
・最後犯人が死ぬ時リスベットが見届けるシーンは必要だったような…。


(※観たのは2月15日で、書いたのは2月23日です。)