『ヤング≒アダルト』



サイモン・ペグや、セス・ローゲンがよく出てくる大人になれない「ダメ人間」ものはよく観るのですが、
この作品は同じ「ダメ人間」ものでもこちらは相当笑えない、正確に言うと「笑わせてくれない」作品でした。


そういう風に書いてしまうと、つまらなかったということではなくて
意図的にダメな所を安易に笑いに着地させていないというか、笑いにすることによって観客を安心させない風にしていたということです。


上にサイモン・ペグ、セス・ローゲンなんていう恐らく「俺の友達になりたい俳優ランキング」に入る名前を挙げましたが、
これは女性をターケット層としている作品でもよくあるジャンルの映画だと思っていて、
「周りは凄く素敵なのに、何をやってもダメダメ」みたいなテンションの映画とかは「ダメ」さをあるあるネタみたいにして
笑いによって観客の共感を得るという手法を取っているのだと思います。(「BOL映画」なんて名前も聞きますが)
こういう映画はタイトル、そしてそのタイトルの色やフォント、主演女優といった情報だけでどういう映画かわかりますね!
食べて、抱きたいアンド・ザ・シティ&KILLみたいなね。
予告編観たら5秒であらすじわかりそうな、よくわかんねぇけどキラ☆キラした人が観そうだな!

・・・話がだいぶ逸れましたが、とにかく男性と女性で作品の雰囲気の違いはあれど、
どちらも「ダメ」さを売りにしたタイプの映画は存在していると思います。


しかし、今回の『ヤング≒アダルト』は自分のダメな所は知っているが、その存在を認めないし目を逸らし続けているので
「ダメ」さが笑いに昇華されない、昇華してくれないのです。
なのでその姿からは痛々しさしか感じさせず、観ている者に「あなたはこの人を笑う事が出来ますか」という問いかけを突き付けてきます。

正直僕もこの作品のメイビスまではいかなくても勘違いや過剰な自意識で痛々しい行動をしてしまったことは過去に何度もあるので、
(というかこの作品を観ることによって封印しようとしていた、そういう過去の自分の痛々しい行動を思い出しました。)
非常に身につまされる思いで観ていました。

この主人公のメイビスさんですが、高校生の頃が人生の絶頂期でその過去にすがって生きているタイプの人ですね。
また、そういうタイプの人でも年齢を重ねていくにつれて、外面が崩れていくものなのですが外面も綺麗なままでいてしまっているので、
余計に業が深いというか、笑えないものになってしまっていると。知らない人はあからさまに「あのババアなにーwウケるーw」的な反応にならないことが勘違いに拍車をかけてしまっているんですよね。
その結果、好きな人の前では毎回レッドカーペットを歩くような格好で来たり、振る舞いや行動も10代の頃のままなんだけど
そういうことをするのも「栄光の10代」の頃に戻れる好きな人の前でだけで、その他の人に対してや、一人の時は皮が剥がれたように別人になってしまう。

ここまで行くと病的な危うさすら感じてしまいますねー。でも彼女の中に少し自分を見たりもするので
「もう・・・もうやめてっ・・・!アンタそれ以上やると心が壊れるよっ・・・!」と胸を痛めながら観ていました。
いやいやあんな痛々しいことしないだろーと思うかもしれませんが、僕は恋愛においてはああいうことは起こりうることだと思います。

普段は冷静で理路整然としている人でも恋愛に関しては
あの人だけ、あいつだけは特別な存在で自分と気持ちを共有しているから理解してくれているはずだ!みたいな風に陥ることだってありますしね。

ただ、ここはきちんと書いておきたいですが歳や恋愛経験を重ねるにつれて「あぁ、勘違いか」とか「こういうのって痛いな」とかもっと言えば
「恋愛ってそういうもんじゃないな」って徐々に気付いていくもんだと思うんです。
だけど人生の絶頂が早めに来ちゃったメイビスさんはその後恋愛自体をやめちゃった、もしくは恋愛をしてもそれを越えるものがなかったので
考えを改めることもなかったんですね。この人にとってはその高校の時の彼氏との恋愛はずっと続いてたんだと良いと思います。


・・・でもなぁー!だからと言って結婚して子供も生まれたての時に「あなた辛いんでしょう?可哀想・・・私と一緒になりましょう」って・・・どんな神経しとんじゃい!!って思いますけどねー。
あと「子供生まれました!命名パーティに来てください!」ってメールだけで「彼・・・まだ私に気があるわね!」って思えるその思考回路が凄いですよ!大したもんだ!!

あと決定的に思いが通じていないとわかった後のシーンのまさに地獄絵図みたいな感じも凄かったし、
個人的に一番うわーと思ったのは前半に出てくる「プリンターのインクに唾を垂らす」っていう・・・男でも引くわ!!

また長くなってしまいましたが、過去の自分の痛い行動を思い出すだけでなく、
地に足を着けて生きて行こうという戒めにもなるので、中途半端にネタにして昇華するのではなく
真摯に自分の痛い所を見つめ直すという意味で、
食べて、抱きたいアンド・ザ・シティ&KILL
を観ているような方々にこそ観ていただきたい作品でしたね!


<補足>
・やっぱあのワイン?は血の表現なのかなー。
・正直あまり正確には覚えてはいない!(偉そう)