『ジャーニー/ドント・ストップ・ビリーヴィン』

あのー、セブンイレブンお好み焼きパンってやつがこの世で一番おいしいパンと聞いたので、食べたんですよ。



おいしかったです。



・・・・。


あ、4月21日ですよ?そりゃ一ヶ月ぐらい経ってますよ。MOVIX京都で観ましたよ。(開き直り)



ま、そんなことはどうでも良いんですけど、今回はちょっといつもとは違う形の書き方をしていきたいと思います。



まずはこちらの動画から見て戴きたいんですが、


この動画でジャーニーというバンドの「オープンアームズ」という曲を歌っている彼こそが、
今回感想を書く映画の主人公であり、ただのファンだったのにYOUTUBEでの映像がきっかけで本物のジャーニーのリードボーカルになってしまったアーネル・ピネダさん(以降アーネル)です。


見て戴いた方はわかっていただけるでしょうが、物凄い伸びのある声で、低音から高音まで歌い上げていて、
僕のようなド素人にも「この人凄い」とわからせるような歌声の持ち主なんです。


しかしこんな凄い歌声を持っているにも関わらず、彼の生活は苦しく、動画で撮影されているようなバーやライブハウスのような所で
バンドの曲を歌って生活費を稼ぐ毎日だったようです。

その彼の生活を変えたのがメンバーのニール・ショーン(ギター)からの「本物のジャーニーで歌ってみないか?」という一通のメールだったという話から始まるのが今回の映画です。


聞いただけで鳥肌が立つような話というか、アメリカン・ドリームをそのまま体現したような話ですが、本当に本当の話みたいです・・・。
(個人的には漫画餓狼伝』のグレート巽というキャラの話を思い出しましたが)


僕自身この映画を観るまで「ジャーニー」というバンドを知りませんでしたし、曲も「ドント・ストップ・ビリーヴィン」と「オープンアームズ」しか聞いたことありませんでした。
それも車のCM『海猿』っていう(笑)、
そのあたりからも門外漢って感じがわかってもらえると思います。


内容についてはうっすら聞いていて「面白そうだけど、そのネタ一発で大丈夫なん?」って思いました。
だって漫画とかアニメでもそういう話ありますけど、正直大事なのはむしろそこからというか、2時間そのネタだけで持たせるようなら厳しいじゃないですか。

でも結果から言うと全然大丈夫でした。
というか僕としてはちょうど2時間ぐらいが良い!って感じでしたね。


『二郎は鮨の夢を見る』の時も言いましたけど、ドキュメンタリーとして重要なのは題材撮影時期、それと監督の見せ方だと思うんですよね。

で、今回の場合、題材と撮影時期は十分すぎる程良いんですよ。
アーネルさんがボーカルになったという事実、そしてなってからのツアーがあったことこの二つでもう凄く面白いんですよね。
でも僕は監督を凄く評価したいと思いました。


その理由はいくつかあるんですけど、まず観客が観たい物をちゃんと見せている点。
これはアーネル・ピネダのシンデレラストーリー」をしっかりと見せるということなんですが、
それを成功させているだけでなく、ジャーニーの歴史を調度良い塩梅でわかりやすく触れていて、
更になんといってもジャーニーのファンの為にライブ映像もふんだんに使っている。
もうこれだけで観客は満足じゃないですか?僕は最近多いバンドのコンサートなどを映画館で中継したり、
ライブ映像などを流したりする「ライブ・ビューイング」に対して貶さないまでも、「好きネー」という感じだったのですが、
今回一つの場所でのライブ映像はそんなに長くはないのですが、「ああこれは観たくなるかも」と思うくらいにはなりました。
冷静に考えてみれば、「デカい画面で、凄え音響で観れるんだから最高」なんですけどね。
だからといって『劇場版『ペ・ヨンジュン3D in 東京ドーム 2009』』に関しては一切の擁護をしませんが(破壊屋さん尊敬します)。


で、次に良いことだけじゃなく悪いことまで映している点。
これは凄く説明が必要なんですけど、まず(順番逆になりますけど)悪いことというのは、
アーネル・ピネダという人が参加したことによって起こったことをそのまま映しているので、
結果的にかもしれませんが、良いこと以外のことまで映ってしまっているということです。
監督の意図かどうかはわかりませんが、これは反響や影響も収めるという意味で大切なことだと思います。
例えば従来のファンからのバッシングの存在も示していて、そしてそれに対するアーネルがどう感じているかも撮っていること。
もっと感心したのは、アーネルが参加したことによってフィリピン系(アーネルはフィリピン出身)のファンが増えたことを映してること。
これは潜在的にいた人がアーネルの参加をきっかけにライブに来たということなのかも知れませんが(それにしても数は多い)、
とあるライブの時に、フィリピン系の熱狂的なファンのおばちゃんグループにインタビューしているシーンがあって、
その方が「アーネルは私達のヒーローよ」みたいなことを言ってたんですが、要は不本意にも部族や民族、人種などの代表として扱われてしまう側面があるということを示唆しているんですね。
「そんな大げさな」と思われるかも知れませんし、その映像でのファンの方々がたまたまそうだったのかも知れません。
しかし、そういう可能性を示唆するだけでも十分ハッとさせられることだと思います。
「それのどこがいけないんだ」と言われるかもしれないのですが、それがアーティストやボーカリストとしての正当な評価かと言われると少し違う気がするんですよね。
つまりアーネルはジャーニーが好きでジャーニーの歌を歌い続けて、加入して、ジャーニーのメンバーも彼の歌を聴いて彼の才能を必要としてメンバーに招き入れ、ファンはその歌声を聴いてメンバーにふさわしいかどうかを判断する、僕はそれだけで良いと思うんです。
もちろん親近感が沸くという理由で興味を持って聴いたら良かったからファンになったというのは普通というか当然の流れだと思うんですが、
「親戚の子が歌出したからCD買って」みたいな感じで広まっていくと良くないことが起きるんじゃないかなと思います。
なによりアーネルからすればそこらへんをちゃんと評価されているのかということに対して、ジレンマや葛藤があるんじゃないのかなぁと思いますね。
こういった人の動きや影響などをわからせる意味でちゃんと隠さずに映していることは良かったと思います。


そして良いことなんですが、単に「アーネルは歌声が凄い」とか「ジャーニーというバンドが再びブレイクし出した」という事実だけでなく、
映画のメッセージや進行の邪魔になるようなことを上手く隠しているということなんです。
僕も映画を観ているだけでは気づかなかったんですが、この作品を観た後にジャーニーに興味が収まらずYOUTUBEで色々動画を見ていてわかったんですが、
実は映画内で使われているライブの映像は調子の良い時のもので、実際は結構調子の良い時と悪い時の差が激しいみたいなんですよ。
作品内でも風邪を引いたり、過酷なツアースケジュールで喉の調子が良くないという場面はあったのですが、
そういう時の歌っている映像は少なくて、終わった後のメンバーの「今回も良かった」という励ましあう姿しかほとんどないんですよね。
映画的にも不自然じゃないだけに「そうだったんだな」と思っていたのですが、色々な映像を見ていてやっぱりそういう時は声が出てなかったりしたんだろうなと気づきました。

まぁこれは興味のある方だけ観て戴きたいのですが、例えばタイトルにもなってる「ドント・ストップ・ビリーヴィン」という曲を例に挙げると、
こっちが最高の状態(CD音源)だとすると、調子の悪いときはこういう感じで特に高い声が出てないんですね。
(決してアーネルを批判する意味で用いた訳ではありません。念の為。)


じゃあ何故監督はそうしたのかというと、あくまで僕の考えですがこの映画のメッセージはまさにタイトルにもある通り、
「信じることをやめるな」ということだと思うのですが、「信じることをやめなかった結果、こんなに凄い奴になれたぜ」って
思わせるためにはアーネルを凄い奴に見せなければならないわけです。
もちろん0から100には出来ませんし、そんなことはただの詐欺なので褒められませんが、
メッセージに沿うように90を100に見せる位は良いことだし、それこそ監督の腕だと思うんですよ。
むしろ「こういう時もあるけどたまにこういう時もあるよね」みたいな感じで見せられても観客としてはどういう気持ちになれば良いか、
どういうメッセージを伝えたいのかわかりづらく、困惑してしまうと思います。
そういった意味で少し盛ったのは正しい判断だと思います。


ここまで長々と監督を褒める形で書いてしまいましたが、「もしかしたら偶然かもしれない」という一抹の不安が残るのは
監督・脚本がラモーナ・S・ディアスさんというフィリピン出身の女性監督だということなんです。

なぜかというと同じフィリピン人として、
前者のことは「フィリピンのスターやで!」という感じで
後者は「アーネルは完璧やで!」という感じで
撮っているかもしれないという僕の邪推からなんですが・・・。


いやまぁそんな完全な勘繰りがあってるかどうかはさておき(多分間違ってる)、
ここでの監督インタビューを読むと、「アーネルとの意思疎通を容易なものにした」という理由だけでも少なくとも同じ出身の人物に監督を任せたことに意味はあったと思いますよ!


あと本作はインタビューシーンが多いのですが、聞き手の声が入ってないのは単純に見やすいし、作り手の存在を意識させないという意味でも良かったです。(『二郎は〜』の監督は見習うべき!)


というようにくどくどと自論を述べてきたわけですが、僕が一番この映画で魅力的だと感じた所は何よりアーネルの歌っている姿ですよ!
歌声はもちろん素晴らしいのですが、彼が歌っている姿というか顔はこんなの今まで見たことないくらい気持ち良さそうに歌うんですよ・・・。
苦しそうでもあり、でも歌える喜びや、歌うことに対しての喜びを外に吐き出しているような、そんな良い顔をするんですよね〜。
観てるこっちまで幸せになってしまうようなそんな感じで、最初から最後まで多幸感でいっぱいの映画でした。


あとアーネルの人の良さ!良い人感が画面から伝わってきてもう魅力的なんですよ。
バンドのメンバーも単に仕事仲間として以上の愛情を彼に注いでるのが伝わってくるし、彼とメンバーのやり取りを見てるだけでも良い!
俺明日からもまた人を信じれる!!
(身振り手振りを使って話をする感じもサイコー)


もう堅苦しいことは抜きにしても音楽とすげー良い人っていう二つの大きな癒しが待ってるので、観逃した人はDVDでレスキューすべき!!
まだやってる劇場の近くの人は走って劇場に向かうべき!!あんま人入ってないっぽいですよ!



最後に予告編の動画を貼って終わりにしたいと思います。




〜補足など〜
・とある場所でライブする時に、控え室に電波が入らないからと、携帯電話を片手に疲れた体でヨロヨロとアーネルが外に向かう場面があるんだけど、もしあのシーンが一切脚本無しなら凄いと思う。
アーネルの熱狂的な人気を表すシーンでもあるけど、同時にAKBの映画じゃないけど「ファンがアーティストを殺す」のも例え話じゃないなと思う様なシーンにもなっててちょっと戦慄
5〜20人しか客がいない所からの〜?15000人〜〜!!ってステージ上がっただけでも卒倒するレベル
入国審査の時に「ジャーニーのオーディション受けるから来た」→「歌ってみろ」→(歌う)→「よし頑張れ」
最初のライブの時はしゃぎ過ぎてマネージャーに叱られる
・アーネルがショーンに発掘されたのはアーネルの大ファンの人が頼まれたわけでもないのにネカフェに一日張り付いてライブの動画を上げてたかららしい・・・。凄い話だけど誰得!
・原題は『Don't Stop Believin':Everyman's Journey』・・・やっぱ原題の方が良いんじゃない?



この映画、おっさん同士のイチャイチャも楽しめますよ!
にほんブログ村 映画ブログ 映画日記へ
クリックお願いします!