『悪の教典』



(これが主題歌を映画の内容に無理矢理寄せた結果だ!)




「あの、「海猿」が今度はサイコパス!!」という強烈な設定で年の後半に割と急に飛び出て来た本作ですが、
最初は「大好物やないか!」という感じで僕はウェルカムムード満載でした。


しかし、予告編を観ても、「・・・どうもしっくり来ない。何かが足りない。」といった感じで違和感を感じていました。
そして実際に観て、その違和感は結果的に間違っていなかったという感想を持ちました。

端的に言うと、この映画って結局は中高生をターゲットにしてる(と思う)ので刺激的だけど、それ以上のものは無いと思いました。
僕が中学生ぐらいの頃に『バトル・ロワイアル』という映画がやっていましたが、この映画は今の中高生の『バトル・ロワイアル』なんじゃないかなと思います。
(結局僕が『バトル・ロワイアル』を観れたのはかなり後になってからでしたが・・・)


では僕が何故しっくりこなかったかと言うと、映画の中で起きることは残酷なんだけど、「悪に惹かれる所が無い」ということと、
「中高生が観て怖いということに徹底している」ということだと思います。

まず「悪に惹かれる所が無い」ということですが、これは単純にサイコパスがカッコ良くないっていうことなんですけど(笑)。
悪のカッコ良さっていうのは容姿端麗とかってことじゃなくて、例えば『ダークナイト』のジョーカーみたいなのを
イメージしてもらえるとわかりやすいと思いますが、悪としてのカリスマ性みたいなのがあるキャラクターを想像してたんですね。
もちろんジョーカーみたいなキャラを想像してたわけじゃないんですが、「怖いけど惹かれる!」みたいな悪役としての魅力を期待してました。

しかしこの蓮実ってキャラは自分の価値観で行動し、その為には他人の命を殺すことをなんとも思わないっていう考えだけで、
特に謎な所も無いし、凄いぶっ飛んだ人というより自分の欲を満たすためにリスクを排除し続けてるだけの人にしか見えないんですよね。
まぁ多分そういうキャラクターとして描いていると思うんですけどね。
「なんでこいつこんなことするの!?わけわかんねぇよ!!」っていうことが無いんです。
一番気持ちが萎んだ所は、なんかねぇ・・・自分の教え子と懇ろになるところが残念でしたね。
結局上手くやってるだけじゃない!と思ってしまって。
あそこで女子生徒が「ちょっと好きになっちゃったみたい・・・///」って感じになっても「あっそ。雨だしそろそろ帰るからお前もさっさと帰れよ。」って言って欲しかったですよ。
そしたら「うおおおお!!こいつ狂ってるよ!」ってなったんですけどねぇ・・・。
つまり女子生徒とのセックスが目的なんじゃなくて、自分が計画を遂行したということが目的で、そのことに陶酔しているんだと。
例え女子生徒と懇ろになるために助けることが最初からの目的であってもあれだと単に欲になびいちゃったみたいに見えちゃうんですよね。


あと「中高生が観て怖いということに徹底している」というのは上に書いたこととも繋がるんですが、
そもそもこの映画僕の様な物が楽しめるようになってないんですね。
それはどういうことかというと、中高生からしたらこの蓮実は「こいつわけわかんねぇ!こんなやついたら怖い!!」という存在だろうと思うんです。
「学校と言う閉鎖された空間でただでさえ大人が少ない、信頼のおける人が少ない、そこに凄く心の開ける先生が現れたけどその人が(自分達から見れば)理由も無く自分達を抹殺し始めた!」
ってなったらそりゃ怖いですよね。それに加え残忍な殺され方も映しだされるわけですから。
どうすれば助かるかがわからない、っていう発想に持って行った時点でこの映画は勝ちとも言えます。
ただ僕は自分をこの映画の中の生徒に置き換えることが出来なかったので生徒視点になれなかったので満足いかなかったと。


なんでこんな感じになったかっていうと僕の勘違いだと思うんですが、
「三池監督がサイコパスの教師役で伊藤英明を主役に据えて血みどろの映画を撮る!」って聞いて
「おお!俺(向け)の映画やんけ!!」と思ってしまったわけですよ・・・。
したら結局『ルーキーズ』とか『海猿』観るような人達の為の映画だったんですよ・・・。
いやそれにしたら相当僕みたいな人間でも楽しめる映画になっているし、三池さんは発注に対して十分な答えを出されたと思いますけど。

ただ、本当に効率しか考えてないハスミンにガッカリしたことは事実で・・・。
殺し方もアントン・シガーとまでは言いませんが、「俺のルール」みたいな蓮実なりの規範が見れたら良かったんですが。


あ、最後の方で屋上に野次馬で来ちゃった子(永井あゆみという役らしいですが)の殺されっぷりは良かったですよ!!(褒め方おかしい)


〜補足等〜
・あのアーチェリーの子にはホークアイさんよろしくもうちょっと頑張って欲しかった!!先生残念です!!
・あと流石にあの距離(校舎の三階から学校の校庭)だといくらショットガンでも一撃で絶命は・・・。
・ついでに原作だと生徒側の反抗も結構あるみたいなのでそっちを観たかったかな〜。
・ちなみに上で触れた永井あゆみという役は、演じた子もイイ!(伊藤沙莉という子)
天てれっぽいけど、『女王の教室』に出てた子みたい
・あの現実か夢かわからない、自分の部屋で回想するシーンは三池さんっぽいなーと思ったり。
・でもあの外国人のあからさまな「わいはマッドでクレイジーでっせ!」って感じは・・・。
・あ、あと主題歌ね。特に後半の生徒は無差別かつ一方的に殺されるのに「ポジティブになれば助かるさ」という内容の曲。こんなんだったら映画の内容に寄せなくて良いよ!!
・観客は高校生が多かったけど、この日ビックリした感想その2として女子高生と思われる子の「超スッキリした!!明日からも頑張れる!!」という声が聞こえた(戦慄)